「お葬式の言葉と風習」(柳田國男「葬送習俗語彙」の絵解き事典)
高橋 繁行著 (創元社 2020)
著者が柳田國男の「葬送習俗語彙」からお葬式に関する言葉、風習、作法を選び、引用する場合には、読みやすく常用漢字、新仮名遣いに直して紹介する。著者による切り絵と、特に近畿地方を中心に聞き書き調査した内容を加えている。
私たち歴史の里マイスターの会では、名古屋、尾張地域の古墳のガイドをしているが、古墳のガイドは古墳時代の葬送儀礼の説明にほかならない。当時ヤマトの政権に協力した中央、地方の権力者たちは、政権の葬送儀礼を受け入れ、同じ形、副葬品をもつ「古墳」を造り埋葬された。
かなり規格化された葬送儀礼を共有することによって、政権の勢力範囲の広がりを示し、埋葬された人の権力・地位がわかる仕組みとなっていた。それでも、細部では地方色がある場合も見受けられ、数十年の違いで墓の形や埴輪のつくり、副葬品に少しずつ変化がみられ、それが研究の対象となっている。
権力者の墓がかなり規格化されていたといっても、一般民の葬送に関しては、いかようなものであったか。そこにはさまざまな風習、その地方特有の儀礼があったと思われる。山沿いの地域には山と関係するような、海沿いの地域には海に関するような、川沿いの地域には川に関するような。
現代においても、お葬式の様式は目まぐるしく変わっている。私が子供のころは、皆、自宅でお葬式をしていた。今は葬儀会館で行うのがほとんど。お墓も「樹木葬」など新しい様式が増えている。納骨堂はボタンを押すと個別の「位牌」や「お骨」があらわれるというものまで出てきた。一方ではまだ、「土葬」にこだわって残っている地域もあるという。
歴史の解説・ガイドをするときは一面的にならず、地域性やちょっとした年代の違いによる変化も踏まえて話せたらと思っている。