シリーズ「遺跡を学ぶ」船形埴輪と古代の葬送 宝塚一号墳 穂積裕昌 新泉社 2017年

宝塚一号墳といえば、出土した埴輪が国宝に指定されたのが昨年の8月、今なお記憶に新しいのではないでしょうか。
とりわけ、全長1.4m、高さは円筒の台部を含めて94cmの船形埴輪は、大刀などの立ち飾りを載せ、その大きさと華やかさで見る者を圧倒します。
ところがこの船形埴輪、墳丘の外側からはまったく視界に入らない所に置かれていたのです。
宝塚一号墳には多様な形象埴輪が出土していますが、著者はとくに船形埴輪と導水施設が内蔵された囲形埴輪に注目しています。そして形象埴輪が多く樹立する、主墳丘と土橋でつながれた「出島状施設」という舞台について考察しています。
墓としての古墳の本質に迫ろうとする意気込みが感じられる一冊です。
著者の穂積裕昌氏は昨年「殯の考古学 考古学からみた古代祭祀3」を上梓されました。この本は2024年7月の「私のおすすめ書籍」にO崎さんが紹介していますので、そちらをご覧ください。合わせて読んでいただきたい内容です。